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『犬神』とマレーシア男。

October 26, 2013 11:49 PM jammy  最近のこと 演劇

演劇実験室カフェシアター『犬神』、うっかり2日目も観劇させて頂いた。初日は後ろの方で椅子に座ってワイドな視野にて鑑賞し、2日目は桟敷席最前列を陣取ってズームアップな視野にて。
演劇実験室カフェシアター主宰の中澤清氏と以前お話させて頂いた際に「演劇はなるべく舞台の近くで観た方がいい。テレビや映画は遠い席、演劇は近い席。出来れば役者の唾が見えるくらいのところがいい。」と仰っていた。わーなんか、すっごい良い事言うなぁと思い、「どうして近い方がいいんですか?」と聞き返したところ「だって面白いじゃん」とかなりポップなお返事を頂いた事を思い出しつつの桟敷席観劇。結果、面白かった。

仮面の造作を隅々まで見てしまうほどの近い席。仮面のクオリティ半端なかった。仮面ひとつひとつに物語が宿っていやがった。花嫁とその母親の仮面はマカロンみたいな、なんかちっちゃいどら焼きみたいなものが積み重なって乗っていて、母の浮かれポンチな様子と世間知らずな娘の間抜けポンチなさまを仮面で表現するともうこれしかないだろう、というくらいスカタンで、でも造形として美しいというずるい仮面。月雄やミツの幻影がつける仮面の白さと形は、通うべきところに血が通っていない血液の渋滞を感じさせ、姑の仮面に刻まれた皺は、意地でもこの村で生きてやろうという、生に対するみっともない固執を想起させる。それくらい、仮面に物語が張り付いていた。舞台上で進行する劇とは別の劇が仮面にあった。どっちの劇も追いかけなくてはいけなくなったので、俄然忙しかった。
本当は仮面にそんな劇性なんてなかったのかもしれない。だけど、そこまで思いを巡らせてしまう地場が『犬神』にはある。公演は明日10月27日(日)まで。

で、だ。

3年前の12月に長野市へバックパッカーとして現れ、しばらく長野市門前界隈に滞在していたマレーシア人デザイナーがいた。名前をDriv Loo。発音的には「デュリフ」みたいな感じらしいが、ややこしいのでドリフと呼ばれていた男。世界的に有名な海外の某広告代理店でアートディレクターとして活躍していた彼が(その事実はドリフ帰国後に知るのだが)、おかしな流れから門前のデザイナー宅にしばらく居候していた時期がある。
門前デザイナーは英語が話せない。ドリフも日本語が話せない。そんなふたりが共同生活を平気な顔して送っていたことも今となっては理解不能なのだが、そのドリフが今日3年ぶりに長野市へやって来た。
3年前はひとりだったのに、3年後の今日は恋人と一緒に現れたドリフ。生意気なドリフになっていた。今着るには少し季節外れな赤いスタジャンを着て、ドリフと再会。3年前に出会った時と同じ赤いスタジャン。それを見て開口一番「あの時と同じ服」とニヤニヤしながらドリフは言った。気付くかなと思って着ていった甲斐があったというものだ。3年なんて、そんなもんだ。

そのドリフらと共に、先の『犬神』2日目終演後の打ち上げにお邪魔させて頂く。ジャパニーズアンダーグラウンドシアターに足を踏み込んだドリフはその打ち上げの様子を見て「ここにいる人全員が演劇に出ていた役者なの?」と聞くので自信を持ってそうだ、こんなにたくさんの人が出ている演劇なのだ、と言おうと思い車座になって飲み食いしている人々をざっと見渡すと、全然知らない人とかもいたから「ここにいる人全員は出ていないが、出ていたような顔をして酒を飲んでいる人もいる」とお伝えした。

せっかくなので日本っぽいお酒を、と思い芋焼酎を紙コップで。度数が24%くらいのやつだったので、ドリフに「24パーだよ」と日本語で言うと「ニジュウヨンパァ(・_・)」みたいな顔しやがったから力強く頷いた。彼も釣られて頷いていた。頷きドリフだった。さすがのドリフも得体の知れない液体を飲まされるのが怖かったらしくしきりにこれは何だ?と聞いてきたので、芋焼酎だ、と教えると(もちろん日本語で)、「イモジョーチュゥ(・_・)」と繰り返したので仕方がない、ここは英語で教えてやるかと思うも「芋」の英語がわからなかったので取り急ぎ「ポテトドリンク」とお知らせしておいた。そしてドリフは頷いた。

12月1日に短編劇場に出るからおいでよ!と誘うと苦々しい顔で時計を指さしながら、ドリフは門前の街へと消えていった。こうして短い再会は幕を閉じたのでした。


welcome to happy set by jogga
ジョッガ代表がhappy setな調子で謳い、綴っています。

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